原価率と粗利額、どちらを見るべきか
― 飲食店の利益管理の基本
「今月は原価率が下がった」と喜んだのに、月末の残高を見ると去年より少ない。飲食店の現場でしばしば起きるこの矛盾は、原価率という指標の性質を理解すると説明がつきます。結論から言えば、経営判断の軸に置くべきは原価率ではなく粗利額です。
原価率と粗利額の違い
まず定義を整理します。
| 原価率 | 売上に対して原価が何%を占めるかを示す「割合」。原価 ÷ 売価 × 100 |
|---|---|
| 粗利額 | 売価から原価を引いた「金額」。売価 − 原価 |
この2つは連動しますが、同じものではありません。そして経営にとって重要なのは、家賃も人件費も光熱費も「金額」で出ていくという事実です。率では支払いはできません。
具体例:率が良いほうが損をするケース
2つのメニューを比べてみます。
| Aメニュー | 売価1,000円 / 原価300円 → 原価率30%、粗利額700円 |
|---|---|
| Bメニュー | 売価2,000円 / 原価800円 → 原価率40%、粗利額1,200円 |
原価率だけを見ればAのほうが優秀です。しかし1食あたり店に残る金額は、Bのほうが500円多い。もし同じ100食が出るなら、Aは7万円、Bは12万円の粗利になります。
「原価率の高いメニューを削る」という判断が、実は最も儲かる商品を削っていた。これは実際に起こることです。
なぜ原価率だけを見てしまうのか
理由は単純で、原価率は比較しやすいからです。業態ごとの目安(一般的な飲食店で30%前後など)が世に出回っており、自店がその範囲に収まっているかを確認しやすい。
ただしこの目安は、業態・立地・客単価によって大きく変わります。高単価の店ほど原価率は高くなる傾向がありますし、ドリンク比率が高い業態は低く出ます。他店の平均値と比べること自体に、あまり意味はありません。
では、どう見るべきか
1. メニュー別に「粗利額 × 出数」で見る
そのメニューが月にどれだけ利益を生んでいるかは、粗利額に出数を掛けて初めて分かります。粗利額が小さくても大量に出る商品は、店を支えていることがあります。逆に、粗利額が大きくても月に数食しか出ないなら、貢献度は低い。
2. 原価率は「全体の管理指標」として使う
メニュー単品の良し悪しを原価率で判断するのは適切ではありませんが、店全体の原価率は有効な管理指標です。先月と比べて上がっていれば、どこかに異常があるサインになります。ロスが増えた、仕入れ単価が上がった、出るメニューの構成が変わった。原因を探る入口として使います。
3. 判断の順番を決めておく
- 店全体の原価率で異常を検知する
- メニュー別の粗利額 × 出数で何が効いているかを見る
- 改善の打ち手は粗利額を増やす方向で設計する
粗利額を増やす3つの方向
- 原価を下げる:仕入れ条件の見直し、規格変更、ロス削減
- 売価を上げる:単純な値上げだけでなく、構成やセット化による客単価の向上
- 構成を変える:粗利額の大きいメニューの出数を増やす導線をつくる
3つ目は見落とされがちですが、費用をかけずに実行できる点で効率が良い方法です。メニューブックの配置、おすすめの表示、スタッフの声かけ。これだけで出数の構成は動きます。
まとめ
原価率は「異常を見つけるための指標」、粗利額は「意思決定のための指標」。この使い分けができると、改善の打ち手が変わります。
具体的にメニュー構成をどう組み替えるかは、飲食店の原価率を下げる5つの方法でも触れています。